波の打ち寄せる浜辺を、キラとラクスは並んで歩く。
 
何を話すでもなく、ゆっくりゆっくりと歩いていく。
 
どこかに行こうというわけでもない。
 
ただ、二人で歩く。
 
互いの存在を隣に感じ、波の奏でる音に耳を傾け、二人砂浜に並んだ足跡をつけていく。
 
 
 
 
go on foot
 
 
 
 
小一時間歩いた頃、キラがおもむろに口を開いた。
 
「……疲れた?」
 
抑揚のない声。
それでも、キラが自分を気遣ってくれているのがわかったラクスは、笑顔でキラを振り仰ぐ。
 
「いいえ、平気ですわ」
「………そう」
 

そしてまた沈黙の中、二人は歩く。
 
キラは、少しだけ顔をラクスに向け、瞳にその姿を写した。
 
風にピンクの髪をなびかせ、まっすぐに前を向いて歩くラクスは、穏やかな表情を浮かべている。
 

どうして、何も言わずに寄り添ってくれるのだろう。
どうして、こんな自分についてきてくれるのだろう。
 
キラは、不思議で仕方がなかった。
 
一度彼女に尋ねたこともある。
 
しかし、彼女はただ微笑むだけだった。
 
何も言わず、ただ、微笑んでくれた。
 
答えのもらえない苛立ちや不安もなくはなかった。
だけど、それよりもずっと大きな安堵があった。
 

言葉で伝えられる想いは、きっと今の自分には受けとめられないから。
 
だけど、失いたくはないから。
 

隣に彼女がいない。
 
そんなこと、考えるだけで背筋に冷たいものが流れる。
 

キラが怯えるように瞳を揺らしたその瞬間。
 
空色の瞳が、こちらを向いた。
 
「……どうか、しましたか?」
 
ラクスは優しい声音でキラに尋ねる。
 
キラは絶妙のタイミングでかけられた言葉に、目をみはり、足を止めた。
 
「…キラ……?」
 
止まってしまったキラに、自身も立ち止まり、ラクスは小首を傾げる。
そんなラクスに、ほんの少し不安の色がちらついたのをキラは見とめ、小さくだが首を振った。
 
「……ううん、何でも……ないよ……」
 
……しまった。
 
明らかに何かありそうな物言いをしてしまったと、キラは後悔した。
 
ラクスは静かにキラを見つめている。
 
「………そうですか」
 
それだけ言って、ラクスは微笑んだ。
そしてまた前を向いて歩を進め出す。
 
「…………」
 
キラは、ピンクの髪が揺れる背中を見つめながら口元を手で覆った。
 

涙が出そうになるのを、必死にこらえる。
 

何も聞かない。
 
何も言わない。
 

ただ、微笑んでいてくれる。
 

それがこんなにも心を満たしてくれていることに、彼女は自覚があるのだろうか。
 

ふいに、くるりとラクスが振り返った。
綺麗すぎる微笑みとともに、右手を伸ばす。
 
「キラ」
 

伸ばされた手に、名を呼ばれた声に、キラの全てが引きつけられた。
 

ゆったりとした足取りで、キラはラクスの元へ向かう。
 
差し出された小さな手を、遠慮がちに取る。
 
ラクスはキラの手をぎゅっと握り締めた。
 
「行きましょうか」
「………うん」
 
 
 
二人は並んで歩く。
 
どこまでも、どこまでも。
 
二人の辿る道には、並んだ足跡がつけられていく。
 
どこまでも、どこまでも。
 
二人は並んで歩いて行く―――――――――
 

END
 
‐あとがき‐
 
なんか歯切れの悪い終わり方;
 
途中まではのりにのって書いてたのに、途中からどう収集つけたらいいのかわからなくてこんな終わり方に(汗)
あぁ、文才が欲しい!
あふれんばかりの文才が!!(持ってどうする)
 
キラとラクスはず――――っと一緒にいて欲しいです。
そんで幸せになって欲しいデス。
誰よりも誰よりも幸せになって欲しい………です。
 
UP:04.12.16
ブラウザを閉じてください。