lonesome
or happy
「キラ、キラ、ちょっと」
そう手招かれたキラは、素直に従った。
なぜなら手招いてきたのがラクスだからである。
彼女から呼ばれて、行かないはずがない。
「なに、ラクス」
しまりのない顔でキラは首を傾げた。
その正面に立ったラクスは、おおむろにキラの頭上に手を伸ばし、そして自分の頭上に向かって手を下ろした。それを何度か繰り返す。
不可解なその行動に、キラは目を瞬かせる。
「ラクス?」
「………やはりそうなのですね」
「え?」
「やはり、キラは………」
いったんラクスは言葉を切る。
そして次の瞬間には、笑顔の花を咲かせた。
「キラは、背が伸びられたのですね」
「………はい?」
満開の笑顔に胸を弾ませつつ、キラは呆けた声を上げる。
ラクスは両の手のひらを合わせ、楽し気に笑った。
「すごいですわ、キラ。また大きくなられたのですね。私ともどんどん差が出てきましたわ」
「あーそりゃあまぁ………」
キラは男子で、ラクスは女子だ。
一時期は同じくらいの身長でも、そのうち追い抜かし差が生じる。
というか、差が出てくれなかったら、困る。
それがキラの本音だった。
やはり男としては好きな女の子よりは身長が高いに越したことはない。
そんなキラの気持ちをわかっているのかいないのか、ラクスは純粋にその事実を喜んでいる。
しかし、ふいにその笑顔に陰りがさした。
それを見とめたキラは訝しむ。
「どうしたの?ラクス」
「いえ……少し、寂しく感じてしまって………」
「寂しい?」
「えぇ、だって………」
そう言い置いて、ラクスは更にキラとの距離をつめ、背伸びをした。
お互いの顔が目と鼻の先に迫る。
「ラ、ラク………!」
近すぎる顔に、キラは真っ赤になった。心臓の速度が増す。
そんなキラには反して、ラクスは形の良い眉を少しだけ下げた。
「だって、キラとの距離がこんなに離れてしまったんですもの………」
「………え?」
距離?
どういう意味かわからず、キラはぽかんとした。
ラクスは頬に片手を添え、苦笑をもらす。
「すみません、おかしなことを言ってしまって………。ただ、キラと瞳を合わしづらくなるのは、少しだけ寂しかったんです」
「……あぁ」
そういう意味か。
背の高さが変われば変わるほど目線は合わしづらくなる。
それをラクスは寂しいと思ったらしい。
「………っ」
キラはますます顔を赤らめ、口元を手で覆った。
ラクスも、自分の言ったことを少し恥じているのか、頬を薄紅色に染めている。
そんなラクスを見つめるキラの胸に、どうしようもない想いが溢れた。
視線を下に向け、所在無さ気にもじもじとする姿が可愛い。
たまにこちらをちらりと見遣る姿が可愛い。
ピンクの髪、空色の瞳、白い肌、華奢な体が、可愛い。
そして、本当に些細な自分との距離を寂しがってくれることが、可愛くて、嬉しくて、愛しくて仕方がない。
ラクスの全てがキラの気持ちを高ぶらせる。
押さえがたい衝動を起こさせる。
キラには、その衝動にあがなうすべがなかった。
本能のままに、すぐ近くにある小さな体を包み込むように、抱きしめた。
「キラ?」
急に抱きしめられ、ラクスはきょとんとする。
キラはいい香りのするピンクの髪に顔をうずくめ、くすくすと笑った。
「僕は、君と身長差が広がって嬉しいな」
「まぁ、なぜです?」
「わからない?」
聞き返したのに、聞き返されてしまったラクスは困ったように黙り、うーんうーんと悩む。
その姿がまた可愛くて、キラは腕に力を込めた。
「何でか、知りたい?」
「はい」
即答に、思わずキラは吹き出してしまう。
そのキラの反応に、ラクスは頬を膨らました。
「なぜ笑うのです?」
「うん?」
「私、怒りますわよ?」
「それは困るな」
「では教えていただけます?」
「うん」
簡単な問答の末、キラはラクスを解放し、視線を合わせた。
空色の瞳に写ったキラはにっこりと笑った。
「可愛くて仕方がない君を、思いきり抱きしめられるからだよ」
瞬時に赤く染まった頬が、キラにはまた可愛く思えて仕方がなかった。
END
‐あとがき‐
あまっ!
久しぶりに書いた甘いのに、こっちが赤面しちまうョ!!
キラもたらしなこと言っちゃってまぁ。なんとも言えない。(ぢゃ書くな)
二人の身長差は種と種デスじゃ随分変わりました、よね?
私はそう見えるのですが……もしかしたらキララク専用妄想フィルターがかかっているせいか、そう勝手に脳中枢部が見せているのでしょうか?(ヤバィよそれ)
キラはシリアスな時はラクスの想いを受けとめたいけど中々踏み切れないで葛藤する。けどほのぼのやギャグ調ではラクスが好きで好きでたまらない。
というのが私は好きv
まぁ結局はラクスを大事にしまくりってことです。
UP:04.12.19
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