剣もつ者
涙をいっぱいにためた、空色の瞳。
いつもは優しい微笑を浮かべるその顔も、悲しげに曇っている。
「………ラクス」
彼女の様子に、自身が辛くなったキラは、そっと声をかけた。
すると、ラクスは何か言いた気に口を開きかけるが、言葉を見つけられず、うつむいてしまう。
小さなその肩は、細やかに震えていた。
「……キ、ラ………」
掻き消えそうな声で、キラの名を紡ぐ。
そしてゆっくりと顔を上げ、
「……申し訳……ありませんでした………」
震える声で、謝る。
嗚咽をこらえ、しかし溢れ出す涙はこらえられず、ラクスは頬を濡らした。
次から次へと流れ落ちる涙に、キラは表情を歪ませる。
「君が謝る必要はどこにもないんだよ、ラクス………」
「…いいえ……いいえっ」
声を絞り出しながら、ラクスは首を振った。
「私の、私のせいで………キラは、また戦うことに………!」
やっと、穏やかな生活を営めるようになったのに。
やっと、キラが戦いから解放されたのに。
やっと、キラが笑って下さるようになったのに……………
「それなのに……私が狙われたせいで、キラはまたっ………」
悲痛な声を上げ、ラクスは両手で顔を覆ってしまう。
こらえていた嗚咽も、微かに響き出す。
キラは胸が締めつけられるように苦しくなった。
ラクスは何も悪くない。
突然命を狙われ、襲われた。
言わばラクスは被害者だ。
それなのに、ラクスは自分自身を責める。
キラを戦わせてしまったことに、心を痛める。
どんなに辛くとも、涙など滅多に見せないというのに、頬を濡らし続けている。
キラはそんなラクスにどう言葉をかけるか悩んだ。
おもむろに、自らの手のひらを見遣り、それを固く握る。
再び手にした、剣。
二年という月日に、ほんの少しだけ違和感を感じた。
しかし、そんなものは一瞬で消え去り、体に染み付いたものは、いともたやすく剣を振らせた。
燃え上がる機体の残骸。
消えてしまった命。
それを再び目の前にしたことを、辛くはないと言ったら嘘になる。
でも
それでも、剣を振るわずにはいられなかった。
もう、立ち止まっていてはいけないと思ったから。
歩き出さなくてはいけないと思ったから。
そして何より、
大切な人たちを、大切な君を。
この手で、護りたかった。
この手で、この小さな体を……………
そう思う中、キラは無意識のうちにラクスを抱き寄せていた。
「キラ………」
悲しい悲しい響きの声。
震える体。
キラは体の全部で、それを包み込んだ。
瞼を閉じ、ラクスの頭に頬を寄せる。
全身で、愛しい存在を確かめたかった。
「……キラ………」
言葉を発しず、ただ抱きしめてくるキラにラクスは戸惑いつつ、身を委ねた。
そうして、互いの体温を、鼓動を、一つに感じてきた頃、キラが小さく口を開いた。
「……ラクス、僕は……君と……ずっと一緒にいたいんだ………」
そこでキラは言葉を区切り、奥歯をかみ締め、搾り出すように
「……君を、失いたくないっ………!」
誰よりも、自分自身よりも護りたいのは君。
傷つけたくないのは君。
君を傷つけようとする者は、許せない。
たとえまた戦うことになろうとも、過去に戻ることになろうとも構わない。
君さえ、傍にいてくれたら…………それで、いい。
「……だから、ラクス……もう泣かないで……自分を責めないで………」
君は、何も悪くないよ―――――
「……キ、ラ………」
切なくなるような優しい言葉と声に、ラクスは全身の力が抜けるのを感じた。
必死に、キラにしがみつく。
「……キラ……キラっ……!」
「………ラクス」
キラは強く、ラクスを抱きしめた。
ラクスも強く、キラを抱きしめた。
これから歩む過酷な路の中、このぬくもりを片時も忘れないように。
ただ強く、二人は互いを抱きしめ合っていた。
剣もつ者。
振るうは、愛しき者のため―――――――
END
‐あとがき‐
やっちゃったョ、突発的(妄想)駄文!!
あ、いえ、常にそうなんですが、今回はほんっと突発的です。
あまりにも13話に感激して………v
14話まで待ちきれないので思わず書いてしまいました。勝手な妄想キララク。
絶対ありえないのを書く。
これが楽しいんです!!(えぇ?)
ちゃんとした話は本編で堪能できますから、なんか自分好みに勝手に書く、というのが楽しいんですよね♪書いてるほうは。
読んでくださる方のことを全然考えていない、管理人でした(スミマセン)
UP:05.01.09
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