サクラソウ
 
 
 
 
 
「ラクス、今日は何の日かな?」
 

にこにこと、わくわくと。
 
キラは聞いた。
その目の前に座るラクスはきょとんと目を瞬かせ、小首を傾げる。
 
「………何の日でしょう?」
「………本当に、わからない?」
「はい」
 
こっくり、と頷くラクスは本当に今日が何の日かわかっていないようで。
 

「何の日です?キラ、何の日なのですか?」
 
興味深そうに、ずずっとキラに顔を近づけた。
 
子供のように教えて、教えてと瞳を輝かせるラクスに、キラは口を半開きにする。
紫の瞳はこれでもかと、見開かれていた。
 

「キラ?どうし」
 
ましたの、とラクスが言い切ることはできず。
それはキラのせいで。
 

ラクスの言葉を、吹き出した笑いによって遮ったのだ。
 
 
 
声を上げて、キラは笑う。
 
おかしそうに、楽しそうに。
 

対するラクスは何が何だかわからず、ただただ目を瞬かせていた。
しかし心の中では、懸命に考えていく。
 
 
 
今日。
何の日でしょう?
それよりも何日?
 
確か………二月五日。
二月いつ…………
 

「あら?」
 
あらあらあら?
 

二月五日とは………
 

「私の誕生日、ですか?」
 
驚いたように口元を抑え、ラクスは空色の瞳をくるんとさせた。
キラはそのラクスの様に、先程のような吹き出し笑いとはまた違う、柔らかな笑いをもらす。
 
「思い出した?ラクス」
 
ゆったりと首を傾げるキラに、ラクスははいっと頷いた。
 
「思い出しましたわ。今日は、私が生まれた日でしたのね」
「そうだよ。自分の誕生日を忘れるなんて」
 

くすくすとキラはおかしそうに笑う。
ラクスは片手を頬に添え、
 
「最近忙しかったせいでしょうか?すっかり忘れてしまってましたわ」
 
とはにかんだ。
 

キラはもう一度くすりと笑い、おもむろにラクスの髪に手を伸ばした。
 
ピンクの髪に指を絡ませ、自分の口元に寄せる。
それを唇にそっと触れさせつつ、紫の瞳で空色の瞳を捕らえた。
 

きょとんとするラクスに、キラは瞳を細め
 

「お誕生日、おめでとう」
「……はい、ありがとうございます」
「それから………」
 

一拍分置き、キラはおもいきり破顔した。
本心から、心を込めて
 

「生まれてきてくれて、ありがとう」
 

そのまま、キラはラクスを抱きしめた。
 
キラの腕の中にすっぽりと収められたラクスは幸福そうな笑みを浮かべ、キラの胸に頬を寄せる。
 
「はい………どういたしまして………」
 

それから。
 

私の存在を喜んでくださり、どうもありがとうございます。
 
あなたの為に、私は生まれてきたのだと、思いますわ…………
 
 
 

ラクスのその想いは口にされることはなく。
 
それでも、体を委ねるキラの胸に染み込んでいった―――――――
 
 
 
END
 
サクラソウ:花言葉『希望』(二月五日誕生花)
 
 
‐あとがき‐
 
ラクス、お誕生日おめでとう!
な気持ちを満載(?)でフリーにしました。もう配布してませんのでおもち帰り禁止ですよ!
 
短いんですけどね。
愛はこもってるはずですョ。
 
誕生花なんですが、二月五日はあと二つほど誕生花があります。どれもラクスにぴったりv
でもクリーンヒットは「サクラソウ」だと思いそうしました。
 
次はキラの(カガリもか)誕生日かな〜♪